【ミュージカル『メリー・ポピンズ』】

 

発表された時にえっ?絶対楽しいやつやん、絶対行く!と思った演目です。
絶対楽しいという期待値を軽く乗り越えて、本当に楽しかったです。色々なことが許されるなら、もう一回行きたいとか、あーやメリーを観たいとか大貫バートを観たいとか思ったのですが、今回は下記キャストの一回こっきり。本当に楽しくて夢のような舞台でした。
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メリーポピンズ:濱田めぐみ
バート:柿澤勇人
ジョージ・バンクス:駒田 一 
ウィニフレッド・バンクス:三森千愛
バードウーマン&ミス・アンドリュー:島田歌穂
ブーム提督&頭取:コング桑田
ミセス・ブリル:久保田磨希
ロバートソン・アイ:もう中学生
ジェーン・バンクス:岡 菜々子
マイケル・バンクス:竹内彰良
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予習として映画版:「メリー・ポピンズ」と「ウォルト・ディズニーの約束」を鑑賞。
演劇内容と共に、この二つもガッチしバッチしネタバレしてるので、未見の方はご注意下さい。

 

メリー・ポピンズ濱田めぐみ
行くわよ、子供達。
サッ、サッ、サッ。のキビキビした言い方大好き。映画版は女優さんが可愛くて、厳しい子守というよりは不思議ちゃんという印象を受けたのですが、濱めぐさんは可愛さよりもキチンとした子守という印象を受けました。バートが絡むと少しキュートさが出るのが良かったな。
柿澤君のバート同様、絶対似合うじゃん、と思って観に行ったのですが予想通りぴったりで素晴らしいメリーでした。

 

バート@柿澤勇人
劇中でメリーに初めて遭遇するシーンの台詞があまりにも情感たっぷりで凄く違和感を覚えました。というのもメリーとバートは恋人ではなく友人、という設定を頭の中に入れていたので、カッキーのメリーへの態度から友人以上の情を感じてしまったから、、、かといって、愛情という結論に持っていける感情でもなかったと思います。

ここで、バートって一体何者なんだろう?っていう疑問が浮かんで来るんですよね。
メリー・ポピンズは妖精・魔法使い・宇宙人と定義する言葉は違えど、人ならざる者という認識は違わないけど、じゃあバートって何者だったんだろう??という疑問が浮かんできます。
映画版の「メリー・ポピンズ」を観た時、私は人間寄りだな、と思いました。子供たちに優しく父親のことを諭すシーンが印象深くて、メリー寄りというよりは人間寄り、人間寄りのメリーの友達という印象を受けました。
でも今回のカッキー演じるバートは人間寄りではないな、と思いました。
じゃあ、100%メリー寄りかと言われると、そういう訳じゃないしなぁ。と演劇後、反芻と思考を繰り返した結果、自分が観た回のバートは下記、結論がしっくりきました。あくまでこの回のみを観た自分の結論です。

かつてメリーが世話した子供。
何十人、何百人といるメリーがかつて世話した子供の内の一人で、その大勢の中、唯一メリーのことを片時も忘れず覚えていた子供であるが故、メリーが無視出来なくなり、特別視せざるを得なかった人間。そして、
メリーが特別視したことによって人間を脱してしまった人、みたいな印象を受けました。

メリー・ポピンズという作品においてメリーもバートも何者でも構わないし、答えは必要じゃない、むしろ答えがない方がいいというスタンスだったんだけどカッキ―があまりにも情感と行間と余白を持ってメリーに接するから、結論が欲しくて考え着いたのですが、柿澤君はどんな芯を持ってバートを演じたんだろう、と今でも思います。

バート役って聞いた時、えっ、メッチャ似合うやん、とか思ったけど本人がバート役を悩んでたと聞いて凄く意外でした。確かに今まで演じてきた役とのふり幅凄いし、人も殺さないもんね!と思いましたが、個人的に感情の全てを外に発して全身全霊で演じる柿澤勇人という役者に惹かれた身としては、ファンタジーの世界で全てを投げ出すよりはどう観客に届ける演技をするのか、どこに重きを置くのか、ということに凄く興味がありました。
結果は、メリーへの接し方が意味深過ぎてメッチャ気になるでしたが(笑)
チャーミングよりは陰が少し見えるバートだったかな?
本人が言ってたようにアキレス腱切って、もう二度と踊れないと思ったところから復活出来て良かった。こんなにも楽しい舞台で歌って踊って演技をする柿澤君を観れて本当に良かった。逆さタップや宙づり等、不意の事故が怖い舞台でもあるから事故も怪我もなくキャスト全員で大千秋楽を向えて欲しいな、と思います。

 

駒田 一 @ジョージ・バンクス
予備知識としてウォルト・ディズニーの約束を観たんですが、最後ウルっとしてしまいました。メリー・ポピンズ」は子供向けの物語と見せかけて、父親のための物語だったんだな、と。この映画は舞台観に行く前に観て本当に良かったです。
映画はメリー・ポピンズの映画化を20年間突っぱねていた著者、P.L.トラバースが金策問題のため、仕方なく映画化を検討。アメリカのディズニースタジオに足を運ぶところから始まります。脚本のチェックを行い了承して始めて映画化の許可にサインするというディズニーにとって異例中の異例の条件で映画化の検討が始まったんだけど、P.L.トラバースのダメ出しが不条理過ぎるほど。。彼女からのメリー・ポピンズは絶対に映画化したくないという強い意志の裏には子供時代の父親との思い出があって……という物語。
この映画には実際にメリーのモデルとなった女性、大叔母さんがチラッと出てくるんだけど、物語のメリー・ポピンズ同様何もしなかったのが良かったなと思いました。
彼女が来ることで家の中の風通りは良くなったけど、それだけで、愛する父親は亡くなってしまう。
彼女を説得し、原題にもなった『Saving Mr.Banks』という言葉。
メリー・ポピンズは幼いP.L.トラバースが救えなかった大好きなお父さん、同じく救えなかった実在した何十人ものバンクス氏のための物語。
この予備知識があると映画の救いと舞台の救いがどんだけ違うか、と打ちのめされるし、そりゃあP.L.トラバースも映画化を後悔したって言うわな、と思いました。

駒田さんの話を全くしていないのですが、上記映画を観たのでメリーとバートに次いでバンクス氏を楽しみにしてました。子供達や奥さんを愛しているけど、仕事にかまけてストレートに表現することを忘れた人という印象。忘れただけだから、仕事が無くなると愛の表現が出来るようになったんだな、と思いました。
今回のミュージカル『メリー・ポピンズ』でいいなぁと思うのは登場人物の心の変化が大袈裟じゃないんですよね。子供たちもバンクス夫人も、ずっとそういう人だったのをメリーが来た変化で、良い方向に戻ったという印象。
子供向けの作品で父親が救われるって珍しいと思うんですよね。大抵、子供のみの話か、母親との関係に比重が行きがちなので、だから、世の中のお父さんに観て欲しい話だなと思いました。

ウィニフレッド・バンクス@三森千愛
守ってあげたくなるような凄く可愛いお母さんだった。夫も子供たちも愛してるけど、表現が足りない、それ故に上手くいかない、そんな印象を受けました。芯がない訳じゃない。芯を持ってるけどずっと内に秘めてて、外に出していいのか分からない。でも「どんなことでもできる、自分で邪魔をしなければ、」って最後に邪魔してた自分をバーンっと押しのけてバンクス氏をかばいに行くシーンが本当に大好き。あれはメリーがなんとかしちゃダメなんですよね。動くのは自分でなければ。
最近、宝塚ばっか観てるし、そうじゃなくても東宝系って宝塚のOGが多いんで三森さんの演技は凄く新鮮で、うわぁ、こういうアプローチの演技観るの久しぶりだーと思っちゃいました。なんていうか宝塚とは可愛さの種類が違うなと思いました。メッチャ可愛かったです!

 

ロバートソン・アイ@もう中学生
キャスト発表された時、何故??と思ったし、個人的には小野田君が観たかったんだけど、チケ取の都合上、もう中のロバートソン・アイになりました。違和感はなかったです。やっぱずっと種類は違えど舞台に立っている人なので、舞台上のアプローチとかお客さんへの分かり易さのアピールが上手かったと思います。ただ思ったほど全然出番がなかったので、これ、小野田君の無駄遣いじゃ、、、と思ってしまいました。。。

 

 

1幕最後にメリーが居なくなっちゃって、幕間に隣の女の子達がえっ?居なくなっちゃったよ??って動揺してたのが面白かったです。自分も映画基準なので、えっ?ここで居なくなっちゃうの?って動揺しました(笑)
子供達が横柄な態度を取ったことへの戒めとしてメリーが居なくなるのなら、子供達が改心してメリーが帰って来るというストーリーだと思ったら、特に子供達は改心しなかったような。メリーが帰って来たのはバートのお陰?と思ってしまった。個人的に何か特別な懲罰がないのに子供達が素直な良い子になったのが面白かったな。
物語の初めと終わりの変化って、バンクス一家がお互いを尊重し理解し絆が深まったことじゃないですか、もっと言ってしまえば、メリーはキッカケを与えたけれど、特別な何かはしていない。
子供達が始めは本当に小憎らしくて、うわぁ可愛くないって思ってました(笑)それが終盤の家族が一致団結してからその子憎たらしさが抜けてメリーが居なくなったことを素直に受け入れて、その描き方が自然でいいなと思いました。
バンクス氏が銀行をクビになるかも、お母さんが意を決して夫を守るために銀行に乗り込むというのはもちろん大きな事件ではあるけど、大袈裟ではなかった。
バンクス氏にしてもバンクス夫人も心のままに従っただけ。
その結果、家族の信頼が深まったっていうのが凄く好きです。もっと大袈裟な事件が起きてメリーの力で万事解決ではつまらなかったと思います。

 

 観劇後にパンフ買いに物販に行ったんですが、後ろに並んでいた年配の男性がスパカリを口ずさんで、ああ、楽しかったんだな、と思いました(笑)
老若男女が楽しめる舞台っていいですよね。
聞き馴染みのある曲なんで歌われると、キタ━(゚∀゚)━!って思うし、その他の楽曲も素晴らしい。色彩鮮やかな舞台セットやアンサンブルの振付も印象的で素晴らしかった。本当、もう一回行きたい!って思う楽しい楽しい舞台でした!!

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