Coloring Musical【indigo Tomato】

 

めちゃくちゃ公演内容ネタばれしてるので、要注意です!!!

 

壮ちゃんがサヴァン症候群役と聞いた時、えっ、絶対観たい!って思いましたし、何ていうか凄く良いモノが観れるんだろうなぁと予感しました。
もっとストレートに言ってしまえばサヴァン症候群の青年を演じる平間壮一を観たい、と思いました。絶対にとんでもないものが観れるという予感が半端なかったです。
Wキャストは今回、剣幸さんで。

 

タカシ@平間壮一
観終わった後にやっぱ平間壮一という役者が凄く好きだなと思いました。
もうこの感想は揺るぎないもののような気がします。今回、大山真志という同年代の歌の上手い役者さんが居たので、歌唱面とかどうなんだろう(比べちゃうかな?)って思ってたんですが、なんか壮ちゃんの魅力って単純な良し悪しじゃないんだな、と思いました。
歌唱での役の表現、個性的な色を持ってるのに舞台上では役が強くて抜けないところ、声や表情での細かい演技、身体的表現*1、挙げればキリがないんですが、全てが本当に凄く好きだな、と思いました。
役者さんなんだからプロなんだから舞台上で役が落ちないっていうのは当たり前でしょって話なんですが、壮ちゃんは容姿とか声とか凄く特徴的でその強さにお芝居が引っ張られてもおかしくないのに、絶対に引っ張られない。観てるこっちも引っ張られない。タカシという役を咀嚼して解釈して外に発する、その発し方がクレバーだなと思うし、その表現の仕方が本当に好きだなと思いました。
例えば、劇の終盤、円周率をそらんじる場面、必死に思い出しながら音に乗せて紡ぐ場面の苦悶の表情や物語のラスト、ニコッと笑うシーン。素が透けそうな部分でもあるけどあくまで役のまんま、ずっと役のまんま。普通ではないことを詰問されて苦しみながら円周率をそらんじるタカシであり、人生が好転した喜びでようやく笑えるタカシの笑みを観て、芯のブレなさを感じました。ずっとタカシだったんだな、と思いました。
演出家の方がパンフに壮ちゃんの魅力に”ダンス”と”笑顔”を挙げていて、それも本当に魅力的だけど、壮ちゃんの魅力ってそれだけに留まらない演技力なんだよなぁ、と思いました。その魅力的な演技力が存分に味わえる役だったと思います。
作・演出家の小林香さんはお初だったんですが、今回の役があて書きだと知り、この演出家さんとは平間壮一という役者の解釈が一致している、と思いました(笑)

 

マモル@溝口琢矢
一応、FROGSやハンサムライブで観たことがあるんですが、感覚的には初!!!でした。台詞の発し方が良いというか声が凄く良かったです。あと、指示として似たような髪型だと思うんですが、壮ちゃんと似たフォルムをしてて、本当に兄弟のように見えました。
演技も歌も上手いし、全体的に本当に良い!!!と思って、最終的にアミューズって本当に素晴らしい事務所ですね、っていつもの結論に至りました。
脚本に関して言えば、もっとマモルがタカシの面倒を見ることへの不満を口にしてくれたら観客も感情移入しやすかったかな、と思いました。
もちろん全体的に正社員になることを躊躇う、教師になる夢があった、兄を持て余してる等の描写はあったけど、中盤、母親は兄だけを捨てればよかったんだ、とか兄さんが俺を母無し子にした(台詞違うかも。。)とか兄への怒りの感情を爆発させるシーンの前にあやに一言漏らすシーンがあったら自分が受け入れる覚悟が出来たのかなと思いました。マモルの描写が少しぼやけていて、観客に察してという意図が感じられたので、もっとハッキリとしたものでも良かったのかなぁ、と思ったんですが、ここまで書いといて自分がもっと劇全体を見廻してたり溝口君を追っていたらマモルの機微も分かったのかな、と思ってしまいました。。。(これは観る側の問題ですね。。)

 

ユーゴ・オブライエン@大山真志
歌が凄く上手かったです。(月並みな感想)
ハーフであることの鬱屈した歌とかそれ故の野心とか凄くストレートな表現でした。
パンフで、TVでタカシを紹介するときに障害を抱えてるからという見下してる態度を取ってということを話してるんですが、大山君が良い子なのか、優しい子なのかわかりませんが全然嫌な大人な感じじゃなかったです。(野心家の部分は凄く感じたのですが)、個人的にはオブライエンも色々あったんだよね、と思ってしまいました。序盤にオブライエンの心情を吐露する歌唱シーンがあったからかな?

ユーゴ・オブライエン以外にもアンサンブルでちょいちょい出てて、これは大山君がどうこうじゃない話なんですが、ずっとユーゴ・オブライエン役と同じスーツ姿が多かったので、紛らわしいというか、ユーゴ・オブライエンとして出てるのか、それとも違う役で出てるのか初見ではわかりにくかったので、せめてベストを脱ぐぐらいの衣装チェンジがあったらなぁと思いました。

 

あや@安藤聖
完璧にお初な女優さんでした。
タカシとマモルの兄弟二人に垣根なく接して壁を取っ払ってくれるカフェ店員役。
あらすじを見た時、もっとタカシとマモルの二人の関係にスポットを当てるのかな、と思ったらそうではなくてあやがぐいぐい二人のなかに入ってタカシと関係を築く役割を担っていました。もっとあやとマモルの絡みを観たいな、彼女の明るさがタカシを変えたみたいにマモルを引っ張り上げた過程も見て観たかったなと思ったんですが、そうすると兄弟二人が救われる過程がバラけて話がとっちらかってしまうのかな。


5つのキャラクター@剣幸
すっばらしかったです!!!
もうこう書くと本当に偉そうで嫌なんですけど、本当にすっごくすっごく素敵でした。惚れちゃうぐらい素敵でした。タカシとマモルの母親役も元男性の役もそして、公園に訪れたお婆さん役も本当に本当に台詞に歌に説得力があって、涙腺が刺激されまくりで素敵過ぎました。
どの役も本当に素敵なんだけど、公園に訪れたお婆さんの「神様はちゃらんぽらん」と言って歌うシーンが本当に本当に大好きで早くもう一回観たい(DVDで)という気持ちでいっぱいです。
台詞を歌詞として歌う役者さんが好きだと思ってたけど、それを通り越して心に届けて説得してくれる役者さんがこんなにも素敵な存在だと始めて知った気がします。

 

物語について
実は始めあらすじを聞いた段階ではそんなに惹かれる題材ではなかったんです。(サヴァン症候群を演じる壮ちゃんはみたいな、と思ったんですが)サヴァン症候群をTVに引っ張り出すというのはちょっと古いような、お涙頂戴ものでいくのかな。。と。。
実際、大山君がハーフでどこにも居場所がなかったという歌を序盤で歌いだした時も、そういう感じで行くんだってちょっと拒否反応が強かったです。

素直にこの物語を受け止めようと思ったのは、剣幸さん演じる元男性が「それでも私はバラを愛した」を歌いだした時、ああ、この作品はサヴァン症候群の青年の話を書きたいんではなくて世間一般が言う「普通」に当てはまらない人たちを描きたい作品なんだと気付けた時です。
世間一般が言う「普通」って呪いだな、とちょっと思ってしまいました。
誰も自分が「完璧だ。」とか「正解だ、」とは思ってないと思うんです。
でも少なくとも「普通だ」とは思ってるんじゃないかな。

普通ってなんなんですかね?
いわゆる大多数。ただそれだけだと思うんですよ。
例えば私は左利きなんですけど、本当にこれの所為でめっちゃ苦労してますし、今でも右利きに産まれたかったって思ってるんです。包丁もハサミも彫刻刀も右利き仕様だから利き手で使ったら使えなくて怪我をするし(つい数か月前にしたし!)、今でも右と左の判断が咄嗟に出来ない(小さい頃にお箸を持つ手が右、と言われまくったせい)、今では大丈夫だけど小さいころはお玉も急須も上手く使えなくて(あれ、分かりにくいと思うんですが右利きに特化した道具なんですよ)、零すことばっかやってたから不器用、不器用、本当に不器用でどうしようもないって言われまくりました。他にも習字も無理くり右で習わされて今思い出してもゾッとするぐらい大っ嫌いな時間でした。食事の時は、座る席すら自分で選べない。
そんなデメリットしか感じない利き手なのに、右利きの人に「でも、左利きって天才が多いじゃん?」みたいなこと言われます。言われる度にただの凡人ですが。。ってなります^p^
もちろん中にはスポーツをやっていて恩恵にあずかったり、実際に芸術面で才能を発揮してる方はいらっしゃると思うんですよ。ただ自分はスポーツをやってたけど特に恩恵に預からなかったし、芸術面の才能も発揮しなかったので、ただ世の中の仕様が自分と真逆でひたすら苦労して理不尽に不器用と罵られた記憶しか残らない……みたいな状態です。
今は左利きだから矯正しましょうなんて風習は廃れてるし、世の中もそこまで左利きに厳しくなかったりするんで、特別なことではないし気にしない人は気にしてないのですが、ただ私は左利きでメッチャ苦労したし、理不尽な思いもしたし、変えれるもんなら右利きになりたいと今でも思ってます。
自分はただ利き手が世間的には少数派、ただそれだけなんです。
ただ利き手だけでもそうなんです。


「indigo Tomato」は産まれや育ち、心が、体が、脳の奥深くが平均を外れていたら、という人達を登場させて「神様はちゃらんぽらん」と言う。
「神様はちゃらんぽらん」。この言葉が一番心に届いたし、今でも心に残ってます。
完璧や正解やましてや普通なんて神様は考えていない。ただ、造りあげるだけ。だから、自分の特性を受け入れなくても普通から外れていても、それを恐れる必要はないし、それは悪いことでもなんでもない。
タカシとユーゴは自分を異星人だと評したけれど、実は異星人なんて見渡せばいっぱい居る。
神様はちゃらんぽらんだから平均的な人間を造るのは案外苦手なのかもしれない。
そんな気持ちを抱いて劇場を後にしました。夜の銀座は異国語が飛び交いまくりで面白かったです。

最後、タカシがちゃんとTVの挑戦に成功して良かったと思いました。
こういう話って失敗してお金貰えないパターン(でももっと大切なものに気付けた的なエンド)が多いけど、いや、お金って大事だよ。貰っときな、ってなりました(笑)
良い方向に良い方向に進んだ物語のラスト壮ちゃんがニコッと笑って物語が閉じるんだけど、あれはタカシの笑顔だったな。平間壮一の笑顔ではなく、ようやく出たタカシの笑顔でした。

Coloring Musicalと題打ってる通り、色彩効果が鮮やかで、黒板を使った演出も楽しかったです。あと、1回観に行けるので、また違った感想を持つのか、役者さんが違ったアプローチをするのか、今から楽しみです!

 

 

*1:今回手や指の形での表現が凄く印象深かったです