2019年版【indigo Tomato】

 


初演時の感想はこちら。

 

 

hatsukatutu.hatenablog.com

 


初演時の感想を読むとわかるのですが、兎に角凄く感動していたし、推しが出てる出ていないに関わらず好きになっていた舞台だと思います。

そして自分の『好き』とは違うところでミュージカル誌で作品がランクインしたり、壮ちゃんや溝口君が男優部門でランクインしたりと、この作品は評価され、また誰かの心に残った作品なんだな、と思いました。
その後、再演が決まった時は凄く嬉しかったし、一人でも多くの人にこの素敵な作品を観劇する機会があって誰かの心に残ればいいなと思いました。

そんな大好きなColoring Musical indigo Tomato
2019年12月5・7・8日で観劇してきました。全部マチネ。チケット取った時は特にこだわりはなかったんだけど、日が落ちて照明に照らされたポスターが綺麗だったので一回ぐらいソワレでも良かったかなと思いました。
5日は本当に突発的に当日券で。
実は4日のFNS見た時に推しが、、、推しが、、、可愛すぎて可愛すぎて、もう今すぐにでも観たい!!!という気持ちになり、たまたま5日用事があってお休みを取っていたので、これは行くしかない、と行ってきました。

 

5日観劇の時はこれは好評な初演ありきのタカシだなと思いました。
タカシが初演よりも他者に対して拒否反応が強いように思え、ユーゴはもちろんあやにもマモルにも、はっきりとした威嚇をしてました。
だから初演よりもタカシが【普通の人】とは違う【障害者】だと【意思疎通のできない人】だと強調されているように見えました。
初演がふわりと浮いている綺麗事な世界だとすると再演は地に足のついた現実的な世界。
そんな印象を持ったのですが、7日も8日はそこまでタカシが他者や外の世界に対しての拒絶が強くないように思えました。でも初演よりはやっぱ強かったかな?ブレインメンの収録の時の身体の震えが凄かった。5日は午前中の用事がバタバタしてたので少し集中力が途切れがちだったとは思うんですが。。。

5日のあのメッチャクチャ攻撃的なタカシはなんだったんだろう。地方とかどうだったのか凄く気になります。。

 

 キャスト

ユーゴ・オブライエン@川久保拓司
 川久保君はパリス伯爵以来。私は2019年の姜さんのパリス伯爵が冷たくて嫌な奴という印象を持ったので川久保君に温かみのある人みたいな印象を持っていたのですが、どうしてこうしてマサシよりも冷たくて嫌な奴でした。見た目がスマートなのも良かった。シニカルな野心家ユーゴ・オブライエンでした。

 

ユーゴ・オブライエン@大山真志
まさし、まさし、太った??
ちょっと横におっきくなったかなと思いました。どうなんでしょうか。。。
でも相変わらずのお歌とユーゴという役と舞台を思いっきり楽しんでおられました。
母親を待ってる時に時計を書き換える役でホットドックを食べながら出てきたのですが、面白い。
まさしがホットドック頬張る演技をするだけで面白い。おじいちゃんのヨタヨタした動きとか、何というか笑いどころのツボを押さえてる人だ。
そしてπの暗記をしているタカシに「頑張ってね。応援してるよ」とかける優しい声が本当に好きです。

 

兄弟にまつわる"女性"たち@剣幸 & 彩吹真央
初演の時、すっごくツボに入って本当に素敵で素晴らしかった剣幸さん。
今回も本当に本当に素敵だった。
神様はちゃらんぽらんと言った後に手を合わせてごめんなさい、する仕草が可愛い。
彩吹さんも相変わらずゴージャスで歌が素晴らしくてこの二人のソロ聞いてる時、メチャクチャ贅沢な時間を過ごしているのではないか、と思いました。
お二人共、ユーゴにキャーキャーするのが可愛い。
そして今回ローズが、ローズがとても良かった。
剣さんのローズは過去の悲哀が見えて胸が苦しくなって、彩吹さんのローズは凛とした決意とゴージャスな歌で劇場を支配していました。
初演と再演のセリフや歌詞の違いはチョコチョコあるけどローズが「普通の幸せ 私には来ない」と歌った歌詞が「普通の幸せ 私たちには来ない」になっていて他人についてそう断言する酷さとそれを否定できない感情がローズが経験したことタカシがこれから経験することを想像して心が沈んでしまいました。
お二人共5つの役をするということで大変なのにどの役も深く深く落とし込んで舞台を彩ってくれて本当に素晴らしい役者さんだなと思います。

 

あや@安藤聖
今回タカシの他者への拒絶を前回よりも感じてしまったのでアヤさんがタカシを受け入れることの難しさと凄さがダイレクトに伝わってきました。
あとマモルに対する眼差しも優しいなーって彼女の接し方や雰囲気で凄く兄弟が助けられてるのが分かってよかった。
これ初演からそうだったんだと思うんですが、初演の時は自分が周りまで見る余裕がなくて再演でアヤさんをはじめタカシ以外のことを観る余裕が出来て本当に嬉しい。
アヤさんが「これはあなただけの挑戦じゃないから。どうにかこうにか踏ん張っている人みんなの挑戦だから」といった時、彼女もどうにかこうにか踏ん張っている人の一人なんだろうなと思いました。旦那さんが一切出てこないこと、彼女がバリアフリーになった過去や意味がきっとあるんだろうな、と思います。
自分を含め多分劇場には「どうにかこうにか踏ん張っている人」が沢山居たんだと思います。
そんな人たちに届けたい作品なんだよな、届けてくれた作品なんだよな。

 

マモル@長江峻行
マモルの母親に捨てられた悲しみやタカシを養わなきゃいけない苦労、夢を諦めた辛さが初演よりもダイレクトに伝わって再演はそこを強調したいのかな、と思ったのですが
これは長江君の力だなと今なら思えます。
長江君、凄く良かった。とてもとても良かったです。
台詞一つ一つにもマモルの人生が見えて、タカシを彩る登場人物ではなくマモルの人生を生きてたな。
ラストの「世界はまるっと綺麗だな」が溝口君の時は声質のせいか少し軽い印象を受けたんだけど長江君はずしっと舞台を締めてくれて、全体的に芝居の要所要所に重きを与えてくれる役者さんだなと思いました。
7・8日は喉が少し疲れてたのかな、ちょっと残念。。5日は歌が滑らかでした。

 

タカシ@平間壮一
初演と変わらず、初演よりも凄い舞台技術を発揮し、タカシとして舞台上に居ました。
タカシ君が居ました。
8日にタカシに不躾な言葉をぶつけるキャリアウーマンがタカシと写真を撮ろうとしてぶつかっちゃたのですが、その瞬間「あ゛!あ゛っあ゛!!」と奇声を上げてパニックを起こしていたタカシを観て、アドリブとか計算とかそんなものは一切なくタカシとして生きているんだなと思いました。
ずっと壮ちゃんの演技が好きだと思っていたのですが、最近はそうじゃなく彼の感性を通して表現される全てのものが好きなんだなと思っています。
歌も芝居もダンスも反り曲がった指の形まで舞台上で発せられる表現力の全てが好きです。私にはその全てにたくさんの色が見えます。
タカシってメチャクチャ難しい役だと思うんですよ。
それは自閉症サヴァン症候群を演じる難しさとはまた違って、indigo Tomatoが持つテーマを演出家の意図を正しく伝えなくてはいけないという座長としての使命があると思うのですが、他者の意図や想いを正しく理解して伝えるってとんでもなく難しくないですか?
普段の生活の中でも近しい人間だってすれ違うことは珍しくもない。解釈違いばかりしてる。
でも壮ちゃんはindigo Tomatoという作品をタカシという役を理解し取り込み租借し、その素晴らしい表現力で観客に届けてくれる。本当に凄い役者だなと思います。

終演後に壮ちゃんが一言挨拶するコーナー(?)があって、8日の挨拶で泣いてしまいました。
記憶を頼りに書くのですがいつものあの壮ちゃんのまとまりのない見切り発車のグダグダとした挨拶なので言葉は全然違いますし、私の解釈込みなのですが、『人間の外の形は同じなのに【普通】と思ってることは全然違う。人の気持ちは分からないし、そう思ってしまう過程も違う、イライラしてる人が居てその気持ちを完璧に分かってあげることは難しいけど、イライラしてるなと気付いた時には避けるんじゃなくて声を掛けてあげるような優しさを、この舞台を見て少しでも持って貰えたら僕たちが演っている意味があると思う。』とその壮ちゃんの言葉を聞いて泣いてしまいました。
舞台俳優ってなんなんだろう。
純粋に職業としていえば舞台上で演じて表現するそれだけの存在で、こちらは彼等、彼女等をお金を払って観るだけ。
それだけの存在。それだけの関係。
よく「お客様の貴重な時間を頂いて」と挨拶してもらうことがあるのですが
自分の貴重な時間を使うと決めたのも自分、自分の貴重な財産を使うと決めたのも自分、好きになるのもファンになるのも追っかけると決めたのも自分、と私の中で舞台観劇は趣味であると共にどこか自分の責任で選んだモノという意識があったし、楽しんで噛み砕いて自分の中で落とし込むという作業をして終わりだったものが、壮ちゃんのその言葉で少し顔を上げて優しい気持ちを持って劇場の外に出てみて、と物語の続きを見せて貰ったような気がしました。

ただ舞台上で演じるだけじゃない作品のテーマを観客に伝えて導く挨拶を聞いて、その感受性と優しさに泣いてしまった。

ちなみにグダグダな挨拶の中で日本て平和だなと思ったエピソードがあって、NYで黒人とぶつかった時に壁を殴りながら威嚇されて、俺死ぬのかなと思ったというお話も披露してくれたんだけど黒人のでかい兄ちゃんからしたら壮ちゃんてティーンエージャーに見えそうだなと思いましたw

 ネット拾いで正確な言葉は分からないけど、千秋楽の挨拶で「自分を愛して」というワードが出てきたらしく、このお話を演じての総括がそこなんだとやっぱり凄い感受性の人だなと思いました。

人に優しくするより自分のことを愛することが難しい人は沢山居て、壮ちゃんがどっちの人か分からないけど、願わくは自分のことを大事に出来る人であって欲しい。その方が生きやすいから。

indigo Tomatoを観終わった後に、誰かを応援したり優しく出来る人でありたいと思ったし、その願いが込められて創られた舞台なのだけど、そこから更に自分を愛してと言える壮ちゃんはやっぱり凄くて、本当に最高で最強な自慢な推しだなと思いました。

一足早い仕事納めだそうで2020年も大きいお仕事が続きますが、30歳になった壮ちゃんがまたどんな表現をしてくれるのか、そしてどんな色を見せてくれるのか本当に楽しみ。待ちきれないです。